自宅ネイルサロンは開業届を出さないでもいいの?メリットやデメリット・提出方法や失業保険についても解説
開業届とは、個人で事業を始める時に税務署に提出する書類の名称です。
自宅でネイルサロンを開業したいけど「税務署」「書類」「届け出」などと聞いてしまうと、複雑な手続きが必要と思われる方もいるのではないでしょうか。
確かに、「開業届の提出」という新しい作業が発生しますが、ネイルサロンを開業して運営していく上で、いくつもメリットがあるのも事実です。
この記事では、開業届のメリットとデメリットや提出方法、そして、開業届を出すタイミングなどの基礎知識を解説します。
個人事業主としてネイルサロンの開業や独立を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
自宅サロンで開業届を出さないとどうなるの?
開業届の正式名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
新しくネイルサロンをオープンする時だけではなく、ネイルサロンの移転や増設、ネイルサロンをやめる時にも税務署への届け出が必要です。
個人事業主は事業を開始してからひと月以内に、開業届を出すことが原則です。
それでも、開業届を出さなかったり、またはすでに開業しているけれど開業届を提出していなかったりするケースもあるかもしれません。
このような場合には、どのような処置になるのかを紹介します◎
開業届を出さなくても法的には問題ない
国税庁の公式サイトには、事業を開始した日から1ヶ月以内に提出してくださいと明記されています。
[提出時期]
事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出してください。
なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。引用元:国税庁公式サイト「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
ところが、開業届を出さずに、ネイルサロンを始めても罰則はありません。
そのため、個人事業主が開業届を出さないで事業を開始しても、法的な問題は発生しません。
ただし確定申告は必要
ネイルサロンを始める時に開業届は必須ではありませんが、何もしないで営業だけ継続できることにはなりません。
お客様にネイルの施術をして、その代金を頂いている以上、収入の申告が必要です。
ただし、専業でネイルサロンを営業してるケースで年間の所得が48万円以下の場合には、確定申告の申請が免除されます。
この場合の所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。
税制が改正される以前は38万円だった基礎控除額が、2020年度分から48万円になりました。
そのため、1月1日から12月31日までの所得が48万円以下の場合には、確定申告の義務はありません。
開業届を提出するメリットは?
個人事業主としてネイルサロンを開業する時に、開業届の提出は必須事項ではありません。
それでも、開業届を提出すると受けられる利点がいくつもあります。
たとえ、所得が48万円以下の経営でも、メリットがあります。
青色申告できる
個人事業主ができる確定申告は、白色申告と青色申告の2種類あります。
青色申告の方が、経費として控除される額が大きくなりますが、記入方法がやや複雑です。
白色申告よりも節税効果があり、優遇面も多くなります。
ただし個人事業主なら誰でも青色申告ができるのではなく、青色申告で確定申告するには開業届の提出が必須事項です。
ネイルサロンで確定申告が必要なケースは?やるべきことと経費で落とせるものを解説!
就労証明(社会的信用)に利用できる
開業届は、個人で事業を運営している証明になります。
会社に雇われている時は、在職証明書や社員証などを必要に応じて会社が発行してくれます。
ところが、個人事業主は自分で開業手続きを済ませなくてはいけません。
ネイルサロンを開業しても、開業届が未提出のままだと就労事実を証明する手立てがありません。
子どもが保育園に入園する時や学童保育に参加する時などに、就労証明が必要なことがあります。
そのような時に、開業届がとても役立ちます。
開業届は公に使用できる就労証明にもなりますし、社会的な信用も得られるため、開業後は迅速に手続きを済ませましょう。
保険や共済に加入できる
会社を退職する時には退職金が支払われますが、個人事業主として経営していたネイルサロンを廃業しても退職金はありません。
退職金がないのは不安という方は、個人事業主が加盟できる「小規模企業共済制度」があります。
国の機関である「中小機構」が運営する制度で、積み立てたお金が退職金として支払われますが、加盟するには開業届が必須条件です。
小規模企業共済制度にもメリットとデメリットがありますので、加盟する前にしっかりと確認してください。
また、自賠責保険に加入するときにも開業届家の提出が求められるケースがあります。
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経費が計上できる
開業届を提出すると白色申告ではなく青色申告ができるため、計上できる経費の額が上がります。
ネイルサロンを運営するために購入した道具や備品、そして家賃や光熱費が経費になります。
最大で65万円まで経費として認めてもらえるのは、大きなメリットといえますね。
経費として計上できるものの一つに家賃があります。
家賃は経費の中でも多くの部分を占めるので、開業したての頃は経費削減のためバーチャルオフィスなどを利用するのも良いでしょう。
自宅ネイルサロンの開業準備はこれで完璧!必要な道具や費用を解説
屋号名義で銀行口座を開設できる
確定申告する時だけではなく、日々の出入金を確認する時に事業用の銀行口座があると経理作業の利便性が上がります。
開業届を提出すると、お店の名前で銀行口座の新設が可能です。
プライベート用の口座とネイルサロン用の口座との使い分けができます。
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開業届を提出するデメリット
ネイルサロンをオープンする時に、開業届を提出すると受けられるメリットについて解説してきました。
事業を運営していく上でいくつものメリットがありますが、実は、開業届を提出することで、発生するデメリットもあります。
メリットとデメリットの両方を確認してから、申請の手続きを始めてください。
売上によっては扶養から外れる可能性も
配偶者の扶養の範囲内でネイルサロンの開業を検討している方もいるでしょう。
所属している企業の健康保険組合によって異なりますが、開業届を提出した時点で、扶養から外れるケースもあります。
また、一定の収入を超えた時点で、扶養から外れる場合もあります。
どちらのケースでも扶養から外れてしまうと、国民健康保険の支払いが発生します。
タイミングによっては失業保険が受け取れない
開業届を提出するということは、失業保険を受け取る条件のひとつである「求職状態」ではなくなります。
そのため、会社をやめて失業保険をもらう予定の方や、すでに失業保険を受け取っている方は、開業届を提出するタイミングによっては受給資格を失います。
ネイルサロン開業届の提出は、失業保険の受給を考慮してベストなタイミングで提出しましょう。
開業届を出すボーダーラインやタイミング
開業届を提出することで発生するメリットとデメリットがあるように、開業届には提出した方がよい所得のボーダーラインとタイミングがあります。
ネイルサロンの開業届を提出する前に、チェックしてくださいね◎
年間の売上によって出すボーダーラインは異なる
確定申告の有無は、1年間の売上から必要経費を差し引いた所得額によって決まります。
ネイルサロンの経営を専業で始めるケースでは、確定申告が必要になるのは所得が48万円を超えた時です。
そのため、所得のボーダーラインは、48万円です。
副業でネイルサロンを開業する時は、給与以外の所得額で決定します。
ボーダーラインは、20万円になり、ネイルサロンからの所得が20万円を超えると確定申告の義務が発生します。
確定申告が必要になる所得を得た時には、税金面が優遇される青色申告するために開業届を提出しましょう。
提出のタイミング
国税庁の公式サイトには、開業してから1ヶ月以内に提出するように記載されています。
1ヶ月をすぎてから、届け出を申請しても罰則はありません。
それでも、開業届を提出すると得られるメリットはたくさんありますので、開業と同時の提出をおすすめします。
また、開業届は、開業前の提出も可能です。準備に追われてしまう前に、提出しておく方法もあります。
開業届はどこに提出するの?手続き方法も紹介
実際に開業届を提出する時には、どのように進めればよいのでしょうか。
提出先や手続きの方法について解説します◎
開業届の提出先
開業届の提出先は、税務署です。
ネイルサロンを開業する場所が管轄になっている税務署が提出先です。
そのため、税務署ならどこでもいいわけではありません。
どの税務署が管轄になるのかわからない時には、国税庁の公式サイトに検索できるページがあります。
開業届の提出先がすぐにわかりますので、チェックしてみましょう。
開業届の手続きについて
開業届の提出方法は、3種類あります。
- 直接税務署に持っていく
- 書留など追跡付き郵送
- 「e-Tax」を利用するオンラインでの提出
開業届の正式名称である「個人事業の開業・廃業等届出書」の受け取り方法は2種類です。
- 直接税務署で受け取る
- 国税庁の公式サイトからダウンロードする
税務署の開庁時間は平日の8:30~17:00です。
時間が限定されてしまいますが、税務署に直接持っていく場合には、わからなかったことなどを教えてもらえます。
郵送する時にも開業届の用紙を保管できるように、控えを同封しましょう。
返信用の封筒に切手を貼ってから郵送すると、受領印が押された控えが受け取れます。
オンラインで提出する時には、ICカードリーダライタなどの事前準備が必要です。
自宅ネイルサロンは青色申告・白色申告どっちがいい?
青色申告も白色申告も同じ確定申告ですが、提出する書類の書式や受けられるメリットに違いがあります。
自宅でネイルサロンを開業する場合には、どちらの確定申告がいいのでしょうか。
白色申告と青色申告それぞれのメリットとデメリットを解説します。
青色申告のメリット・デメリット
青色申告なら経費として控除される金額が最大65万円ですので、税金が大きく優遇されます。
また、赤字分が3年繰り越せること、家族への給料、家賃や電気代も経費になるなどのメリットがあるため節税につながります。
青色申告のデメリットは、記入する様式が「複式簿記」といわれるものになり、簿記の知識がない人には、ハードルが上がります。
それでも、初心者が青色申告するためのサポートサービスがあります。
サービスを上手に活用すると青色申告がスムーズに進みますよ◎
また、青色申告するためには開業届に加えて、税務署に「青色申告承認申請書」の事前提出が必須です。
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白色申告のメリット・デメリット
白色申告の様式は「単式簿記」ですので、「複式簿記」のような専門知識は必要ありません。
白色申告のメリットは、簡単に決算の手続きができることです。
帳簿の難易度は下がりますが、青色申告で受けられる特別控除はありません。
そのため、ネイルサロンでの収入が上がるほど、支払う税金の額がどんどん上がります。
自宅ネイルサロンの開業届に関するよくある質問
自宅でネイルサロンの開業を検討している多くの方が気になる質問に回答します。
わからないこと、知りたいことはスッキリと解決して、開業の準備を進めていきましょう◎
Q.起業後は売上がなくてもすぐに提出する必要がありますか?
開業届は、ネイルサロンを始めてからひと月以内に提出することが原則です。
ところが、未提出であっても、罰則はありません。
そのため開業届を提出しないまま、ネイルサロンを運営しているケースもあります。
Q.開業届出さなければ確定申告は必要ありませんか?
A . 確定申告は、開業届の提出にかかわらず1月1日から12月31日までの所得の金額によって、提出の義務が発生します。
収入から経費を差し引いた金額が48万円以下の時には、確定申告は必要ありません。
自宅サロンでも開業届を出したら扶養から抜けてしまいますか?
A .配偶者が所属している健康保険組合の規定によって異なります。
開業届を提出すると同時に扶養から抜けてしまうケースもあれば、開業届の提出後でも一定の所得額に満たない場合には、扶養のままいられることもあります。
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自宅サロンの開業では失業保険(失業者手当)を受け取れませんか?
A.自宅サロン開業の場合、開業届を出すタイミングによっては失業保険を受け取れない可能性があります。
失業期間中に開業届を出した場合、「休職状態」という条件を満たしていないため、受給資格がないとみなされてしまいます。
失業保険(失業手当)を受け取れるのは、離職した翌日から一年間です。
支給される期間を避けて開業届を出すようにしましょう。
開業届は出さないよりも出した方がいい!独立後は提出しよう
開業届の提出や青色申告の手続きは、確かに複雑だったり、面倒だったりすることがあります。
それでも開業届を提出するメリットは大きく、ネイルサロンの経営を軌道に乗せるための税制面でのサポートにもなります。
また、開業届を提出してネイルサロンを運営することは、社会的な信頼が得られることに加えて、個人事業主としての自覚や自信にもつながります。
書類の提出や税金関連のことが苦手な方は、ネイルスクールに通うのもおすすめです。
ネイルスクールシンシアでは、自宅ネイルサロンの開業や独立向けのコースを用意しており、卒業後の開業サポートも受けられます。
ネイルサロンを開業した先輩の体験談を教えてもらえる機会もあるので、ネイリストにかかわる様々な知識が習得できますよ◎
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